近年、インテリア雑誌でもラグ特集が組まれているように、一般の家庭でも家の中のスタイリングをする際に、足元を彩るラグが注目されてきているようだ。ファッションで例えるなら “おしゃれは足元から“といったような感じだろうか。テーブルなどの家具にこだわりのものを置いたとしても、肝心の足元がきまらないと拍子抜けしてしまうのは想像に難くない。
そういった空間スタイリングのセオリーを知ってか知らずか北欧諸国ではラグを「床の宝石」と表現するらしい。ミッドセンチュリー期を境に名作家具を世に出してきた北欧諸国では、その当時から家具をより魅力的に見せるためのアイデアが豊富で、中でもラグが重要なアクセントになるということにも気づいていたのだろう。
けれど不思議なことに、こういった背景があるのにも関わらず、意外に北欧のラグを専門にしているデザインブランドというのはそう多くはない。そんな中、デンマークの首都コペンハーゲンを拠点にラグ専門のブランドとして2004年に創業したのが「FABULA(ファビュラ)」だ。ラグ商を営んでいた両親の元で幼い頃から本物のラグに親しんできたJens Landberg Schrøder(イェンス・ランドバーグ・シュルーダー)とその妻のRikke Landberg Schrøder(リッケ・ランドバーグ・シュルーダー)、テキスタイルの分野で高く評価されているデンマーク人デザイナーLisbet Friis(リズベット・フリース)らが中心になって自分たちの美意識に合うシンプルで普遍的なデザインのラグを作り続けている。
FABULAが拠点としているコペンハーゲンの中心街の建物は、フロアーを回廊できる筒状の建物が多いが、FABULAのショールームもそういった建物の1フロアーを使って部屋ごとに北欧の名作家具や現代のデザインやアートとFABULAのラグを組み合わせた空間でプレゼンテーションを行なっている。回廊上に配置された全ての部屋をまわってみると、空間の中で過度な主張をせずとも、FABULAのラグが空間の全体像にメリハリを与え、そこにあるどの時代の家具やデザイン、アートを引き立てる重要なアクセントとなっていることは一目瞭然で理解できる。しかしながら、どのような空間にも順応していくこうしたラグづくりはどういうところから生まれてくるのだろうか。
FABULAのラグはインド最大のヒンドゥー教の聖地ヴァーラーナシー近郊の「バドヒ」という村で作られる。この「バドヒ」という地域は古くから手織りラグの産地として知られ、村の位置するエリア一帯でラグの生産を行なっており、ここに住むほとんどの人々が、ラグ作りに携わっているといっても過言ではないほどラグ産業が盛んな場所だ。繊細な繊維を紡いで糸にするところは女性が担当し、染色、そしてラグを織りなどの力を必要とする工程は男性が担当したりと、素材からラグを加工するところまでこの村で一気通貫に行なっているのが特徴。さらにFABULAのラグの全てに使用されているニュージーランド産のウールも紡績する前の原材料の状態でこの村に運ばれるのもとても重要なポイントだろう。平織で編まれたラグは、デザインや配色によって経糸をリネンやコットンに変えながら織られるのだが、機械以上の精度を誇る「バドヒ」の人々の技術がないと織れないパターンや複数の糸を撚り合わせないと完成されない配色も多いそうだ。そのためFABULAはこのエリアで数か所の工場と契約し、新たなデザイン案の紹介や配色の提案、またそれらを形にする技術レベルの協働をするため年2回程度、オーナーのJensやデザイナーのLisbertが現地に赴いている。それに加え、製造工程が全て手作業で行われるため、熟練した職人を育てることや現地の女性たちの社会的な自立の支援にも力を入れているそうだ。こういったようにFABULAのラグは「バビト」の人々なしでは成立し得ないプロダクトなのだが、そこまでこだわって自分たちのデザインを形にしたい訳は何なのだろうか。
例えばLOKEというニュージーランドの高級ウールを使用したパイルラグを見てみよう。このラグは仕上げの際に、職人レベルでないと分からない規則性を持たせたパイル部分のカットを手で施し、毛並みを不均一にすることによって、同一色で織られたラグの中に有機的な陰影をデザイン施していたりする。この陰影の感覚は、自然の中に身を置いた際に感じる自然体の心地よさと近く、長く閉ざされた冬やその真逆の開放的で美しい夏のコントラストがもたらす、北欧諸国の人々の目に映った人間本来が感じうる心地よさのある自然観そのものなのだ。
つまり、ここまで作りやデザインにFABULAがこだわるのは、FABULAが感じた感覚や美意識を体感してもらいたいがためなのだろう。こういったことはFABULAが発信する言葉の中に「nature」や「slow」、「balance」という言葉が使われていることからも見てとることが容易にできる。
調和の取れた自然観のあるデザインとそれを形にしていく職人技が共に編み込まれたラグFABULA。あなたの暮らしの足元を心地よくすることは間違いないのではないだろうか
デンマーク・コペンハーゲンのラグ専門ブランド・「FABULA(ファビュラ)」は、ロングライフデザインの国デンマークならではのシンプルで普遍的なデザインのラグを作り続けています。ニュージーランド産のウールを使用し、インドの手織り職人たちの手によって一点一点丁寧に織り上げられたラグは、丈夫で長くお使いいただけます。手間と時間をかけて作られた、高品質のハンドメイドラグをお届けします。